潮騒

日記

08/27

 

4年勤めたパートを辞めた。いきなり勤務場所を変更され、慣れない作業と環境に押し込められ、初めて会う人たちに戸惑っていたら胃がキリキリ痛くなったり憂うつと不安が混じって夫の前で号泣したり、なんだかもう心身ともに限界かもしれないと感じた。風邪が長引いて咳もしていたせいか疲れ切っていた。

ちょうどお盆休みに入って、行きたい場所もしたいこともできて楽しいはずの連休なのに内心は仕事のことでずっと悩んでしまい暗く憂うつな気持ちを引きずっていた。喫茶店に行ってケーキを食べながら気持ちを落ち着かせて、一緒に行った夫に色々話を聞いてもらった。そんな会社辞めなと言ってくれて、ちょっと軽くなった。

連休明け、非常識だとは思ったけれど電話で今日で退職するということを伝えた。会社には行けないと思ったし関わりたくもなかった。ものすごくあっさりと終わってしまった。職場の人には申し訳ないことをした。挨拶もしないまま退職するなんて。でもこれが精一杯だった。電話した直後、この4年間はいったい何だったのだろうという無力感でまた泣いてしまった。

今は、外に出る気力が湧かずに部屋に引きこもってしまっている。どうにかしないといけないという焦りは募るのにどうにも体が動こうとしない。一時的なものだと思いたい。とりあえず今は再びちゃんと働けるようになるまで休むことに専念する。

 

 

5/1

 

 

宮地尚子著「傷を愛せるか」を読んだ。

精神科医として働きつつトラウマやジェンダーの研究をしている著者は、この研究が本当に患者のためになっているのかと悩んだり、過去の記憶や眠ったときに見た夢を思い起こして「傷」というものについて考えたり、他者や見た作品を通して著者自身が救われたり。そういった経験を綴ったエッセイ集だった。もっと専門的なものかと思っていたけれど、書かれていることは身近に私が感じていることととても近かった。

落ち込んだり傷ついた人に対して私ができることってなんだろうと悩むことがある。どう言葉をかけるべきかがわからない。虚しい気持ちになることも多い。著者も同じだった。自殺を考える人に、生きていて欲しいと本気で願いつつもそれが気休めにしかならず生きる希望を諦めて生きていってもらうことと紙一重だということに著者は気づいている。気づきながらも、それでも幸せを願い続ける、誰かの命綱やガードレールになると信じて伝え続けている。人が人に対してできる事って案外少ないのかもしれない。でも1番必要な願いだ。

精神科医だとか研究者だとかそういう肩書きよりも、1人の人間としてどう感じているか、どう感じてきたかが素直な文体で綴られていて良い本だなと思った。読み進んでいくうちに自分も過去に受けた傷を撫でて手当てしてもらったり、弱いままでも大丈夫だと、「傷」は綺麗に治さなくてもいいんだと、それを抱えて生きていくことが自分を作っていくんだと。そう語りかけてくれているような感覚になって私もこの本を通して少し救われた。エッセイの中で紹介していた「包帯クラブ」を私も読んでみようと思った。

 

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7/31

 

 

パート先に応募して勤め始めて2年が経とうとしている。本当にあっという間だった。初めは、がんばって働こうと意気込んで1日も休まず、祝日も出勤してお金を稼いだ。でも最近は、体力が無いせいか体調をよく崩す。本当は休みたくないのに当日欠勤が増えた。

会社に迷惑をかけてるんじゃないかという焦りと、治っては崩れる心身の自由の効かなさに歯痒い思いをして、休みを取っても全然休まらない。何もかもこの暑さのせいにできればいいけど、暑さだけでは無い気がする。夫とは毎日楽しく過ごしている。小さい喧嘩はありつつもなんとかお互い協力して、たまに全て任せたりして、おかげで不自由なく生活することができている。もっとがんばれたらいいのに。夫からは充分がんばってる、むしろがんばりすぎてるくらいだと言ってもらえた。

でも、自分が自分でよくがんばってるねって認めない限り、私はずっと落ち着けないんだと思う。

 

 

 

 

5/19

 

昨日は引っ越し先で知り合った友達と一緒に近所のオープンしたばかりのカフェに行ってきた。友達の車に乗って着いてカフェの扉を開けようとした瞬間に店員さんが中から出てきて「いらっしゃいませ」と元気よく挨拶してくれた。若くて可愛い店員さん。ちょっと緊張した。外装も内装もナチュラルで整っていて綺麗。ヴィンテージ風な木製のインテリア家具が温かみを感じさせる雰囲気の良いカフェだった。2階に案内されて、窓辺はカウンターになっていた。窓からは高架を走る電車が見える。夫が大の鉄道好きだから今度は夫と行きたいなと思った。私たちはカウンターの端っこを選んで、日替わりケーキを頼んだ。アールグレイの茶葉の香りと味がほっとするおいしいシフォンケーキだった。

 

友達とは出会ってからずっとお互いの悩みを話し合って共有している。どういった服が好きとか、音楽の話とかよりももっと深く、過去のこと将来のこと家族のこと恋愛のことなどの具体的な悩みを。向こうも私の悩みを嫌がらずに、むしろ、悩みはある?と聞いてきてくれた。出会って3か月も経っていないのに色んな表面的な話をすっ飛ばして聞いてきてくれた。そういう存在が住む場所を変えても出来るなんて思ってもみなかった。繋がるってすごいことだ。彼女は私にはないものをたくさん持っていて、きっと同じ学校の同級生だったとしたら私は彼女に嫉妬していたかもしれない。具体的な悩みを知らずにいたら、彼女も私と同じ人間で同じように悩んでいるんだということに気づかないままいたかもしれない。それぐらいにキラキラして見えるから。人は人と比べるとき、良いところしか見えないように出来ている。そういう出会い方ではなくてよかったと思った。タイミングって決まっているのかもなんて、そんなことを思わずにはいられないほどだった。この時はお互いにお菓子作りが下手くそという話題にもなった。彼女は見た目からするとすごくお菓子作りがうまそうで、趣味にしていそうなおしゃれで可愛い雰囲気だから意外だった。ずぼらだったり面倒臭がりだったり似ているところがあるなあと思った。彼女の抱える悩みがすべて解決していってほしい。

 

カフェはモーニングもあるらしいから、次に行くときはモーニングを頼みたい。

 

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4/22

 

同棲を始めて3か月後に彼と結婚した。6年も続けていたアルバイトを辞めて引っ越しの準備をして、彼のご両親に挨拶をして、引っ越しの手続きをして、引っ越しをして、両家の顔合わせの計画をして実行して、数日後に入籍した。婚姻届を完璧に書き上げるのにもすごく神経を使った。お互いの実家が離れているから親に会える機会がそれぞれ1日しかなかったり、本籍地が分からず謄本を取り寄せたりいろいろと慣れないことをした。結婚なんて紙にパパッと書いて提出して終わりだよと言っていた母を少し恨む。でももう過ぎたことだ。私は彼の妻になって、彼は私の夫になった。なんだかまだムズムズする。夫、妻という立場に。何をもって夫、妻という立場になったのか。結局は生活の延長線上に立っているだけで、何も変わった気がしない。良いことはもちろんあった。彼の親戚が優しくて良い人たちだったこと、祝福されたこと、彼との生活にも慣れて喧嘩の数が前より少なくなったこと、新しく友達ができたこと、お互いの悩みを話し合うことができたこと、毎回拙い料理だけれど前より楽しくなったこと。

 

今の悩みは、働きに出るのが怖くなっていること。外出自体は苦にならないし、楽しいと思えるのに「働く」となると身構えてしまう。気持ちを塞いでしまう。お金はない上に減るばかりで、焦りはあるのに前向きになれない。この思考をどうすればいいのだろう。求人票とにらめっこする日々。

 

 

12/20

 

付き合って4年目になる恋人と同棲を始めて明日で1ヶ月が経とうとしている。

ここに引っ越してきて驚きと喧嘩の連続だった。

人を感知して灯りのつく照明、3台のGoogleアシスタント、49インチのテレビ、2台のモニターがついたパソコン、タイル式のカーペット、スチーム付きのヒーター、リビングソファとして使っている新幹線の座席、お風呂とトイレの換気扇機能、バルミューダのオーブントースター、コーヒーメーカー、T-falの電気ケトル。

実家とは何もかもが違う便利な家電たち。便利で嬉しいと思う反面、ああ、私はずいぶんと遠いところに来てしまったんだなと寂しくなってしまった。ここには寒い朝に灯油タンクのスポイトをじゅこじゅこ鳴らす母の背中や、机から物を落としまくりアラームより先に起こす愛猫もいない。こたつの中に埋まったリモコンを時間かけて探すことも、照明から垂れ下がる紐を真っ暗い部屋のなか探すこともない。不便だな、しんどいなと感じていたことは実は豊かな光景を見せてくれていたのだと思った。私は灯油ストーブの静けさが好きだったし、どういうことをすれば物を落とされないかを考えるのが好きだったし、リモコンを探したり、照明の紐を探る感覚も好きだった。

 

新しいものや便利なものが大好きですぐ機械に頼る彼と、自分でやれる範囲(電気つけたりテレビつけたり)のことは自分でやるという考えを持つ私で度々衝突した。自分の常識だと思っていたことが相手には通用しないということを、身に染みて経験した1か月だった。これからはここが私の家になるんだ。彼とも、家族になるんだ。

彼との生活を好きになれますように。今いる場所を私の場所にできますように。

 

 

2/22

 

○歳だからこうしなければならないという法律は無いのに、重たくのしかかる現実問題、あれこれ。私は自分の将来のことをまるで考えられなくて、目の前のことをやるだけでいっぱいいっぱいになる。4時間働くだけで死ぬほど疲れてしまうし、泥のように眠ってしまう。昼寝が全く心地よく無い。生きていく気力や意欲が日々削られて、小さくなっているのを感じる。人にも極力会いたくない。お腹は空くし、たらふく食べて満足する心も体もちゃんとある。なのにこうした暖かい春の空気に満ちた夕方、少しずつ夜に近づく手前の青い色を見つめていると、とても悲しくなる。死にたくなってしまう。苦しい。ずっと苦しい。