潮騒

日記

先週の日曜日は山梨県笛吹市に行って桃を食べてきた。食べ放題。

わたしは車に酔いやすいから景色を楽しめるのは最初のうちだけで、あとはイヤホンをして眠ってしまう。免許を持っているのに運転が下手だからわたしはただ乗っているだけ。揺られながら2時間くらいして着いた。

食べ放題の場所は、バスツアーで訪れた団体の人々でごった返していた。みんな桃を食べるためだけに来たんだ。わたしたちもそうだけど。屋根から降るミストの暖簾をくぐり、ベタベタするテーブル、ガタガタして落ち着かない椅子に腰かける。食べる分だけ桃をお皿に乗せナイフでつるつると皮を剥く。ぜんぶ熟れているから桃の匂いがつよかった。手のひらがぐじゅぐじゅに濡れながらもやっとの思いで皮を剥いて、一口サイズに切って食べた。口のなかも手も周りもぜんぶが桃の匂い。ジューシーでやわらかくてしあわせだった。しあわせだったけど、2個食べたら飽きちゃった。他の食べものだったら食べるけど桃はもういらないという状態。お腹はいっぱいじゃないのに。なんだかもったいない気持ち。

 

食べ放題のあとは石和健康ランドへ。露天にあった寝ころび湯という浅いお風呂に入った。ぷかぷかと浮いていると嫌なこととか一瞬だけ忘れることができて好き。

ぐにゃぐにゃにゆでられたマカロニみたいな裸体のおんなたち。お風呂に入るとみんな同じに見える。外でかぶってきた埃が、ぜんぶ流されてピカピカになる。

休憩ルームで横になっていても出入りが激しくて寝苦しかった。リクライニングの椅子もビニール製だから寝心地は良くない。変な夢を連続して見て、頭痛といっしょに起きた。寝ころび湯にいたほうがよっぽどよかった。

 

帰りに、母の恋人の同級生だという人の家に行って桃を段ボール2箱、めいっぱい詰めてくれた。傷がついたり熟れすぎていたりして出荷ができない桃らしい。

それでも食べ放題で食べた桃よりも大きいものもあったりした。母の恋人に似て笑顔が素敵で、明朗で、気前の良いおじさんだった。

いわく、20年ぶりに会ったのだそう。20年という歳月を全く感じさせなかった。お互いに隔たりがなかった。これが友人ってものなんだろうと思った。会っていなくても、離れていても、久しぶりに会ったらお互いを思いやる。笑顔で話せる。受け入れる。

イヤホンをして、夕焼けと夕暮れと夜空を車内で眺めながらわたしにはそんな友人いるんだろうか、そういう人間にわたしはなれているんだろうかと思って段ボールにたっぷり詰まった桃といっしょに揺れて帰った。