潮騒

日記


ピンク色の剃刀を持ってじっと見つめていたクラスメートの瞳を思い出している。その剃刀貸してと言いたかったけど言えなかった自分のこととか。
なんでもない日常のシーンに加えられた傷。こころの淵を漂っていた冷たくてあたたかい空気。心地よく感じてすらいた突然の忘却。負のエネルギーに強く惹きつけられて抜け出せなくなることを予感していた。拒絶したくても受け入れるしかなかった事柄を、だんだん思い出せない。

夜。助手席のサイドミラーを見た。わたしのからだのうえを様々な風景が滑ってゆくのをただ見つめていた。
ライトが綺麗って、子どものころは感じなかった。