潮騒

日記

愛かもな

その人が言った言葉や物が、自分の生活の中で特別な意味を持ったり、キラキラして見えることがあって、わたしも誰かの生活の中に溶け込むあらゆる物や言葉をそこだけ周りが無くなっているような、白く浮き上がって見えるような、涙を誘うような、そんな特別なものを増やしていけたら嬉しい。自分という存在がそこに居なくても、そこに居ることができる。意識的に存在する。

元彼が、潮の香りは海の生物が死んだ匂いなんだよと言ったから、潮の香りはわたしにとってただの潮の香りでは無くなった。潮の香りに元彼が居る。

花好きな母が、赤い彼岸花は嫌いだと言ったから、わたしにとって赤い彼岸花はただの赤い彼岸花では無くなった。あの彼岸花に母が居る。母も元彼も生きているけれど、そこに宿っている。そしてそれらは特別な意味を持ってわたしのなかにも在る。それが愛なのかどうかはわからないけれど、愛かもなって感じている。