潮騒

日記

蝶の死骸

道端に葉っぱが落ちていると思ったら蝶の死骸で、何度か立ち止まって眺めたことがある。生きていることのしるしを無くした蝶はほんとうに植物みたいに羽根が風にゆられて淋しい。どうしてこんな道の上で死んでしまっているのだろう。花は道よりも高いところに咲いているのに。ポトリと、急に死ぬのだろうか。蝶が死ぬ瞬間も、落ち葉に見えたりするのだろうか。自転車や車に引かれたのならバラバラになってしまっているはずだから、引かれたわけではなさそうだった。

 

虫が死ぬ瞬間は人が叩き潰したところでしか見たことがない。殺害現場なら何回も知っている。

 

以前、大雨が降っている中に道の上を青虫が一生懸命歩みを進めて草むらに避難しようとしているところを目撃した。
暗い道路の上で青虫だけが鮮やかで、わたしなんかよりもよっぽど命が光って見えた。虫に感情がないなんて思えない。たとえ感情は無くても、生きようとする強さはどの虫たちにもある。このひたむきな青虫はやがて蛹になって蝶になって飛んでいく。

 

人間だけが、生死を持て余している。