2016-09-22 傘もない 傘もささずに寄り添って歩く恋人たちの周りだけ雨が降っていないように見えた。 わたしの顔を好きだと言ってくれた人がいて、目が小さいと笑いながらもわたしを愛してくれた人がいて、詩が好きだと言ってくれた人がいて、会いたいと言ってくれた人がいて、実際に会ってくれた人がいて、それなのに身体の真ん中を吹き荒ぶこの空洞は何だろう。何にも埋まっていかない。埋まらないのに、変に苦しくなったりする。ここには誰もいない。 恋人たちをいつの間にか見失って、淋しい雨だけがわたしを包む。捨て去ってしまいたい。傘も。