潮騒

日記

 

体臭のきついインド系外国人が食べていたグレープガム。ふわっと香る菓子パンの匂いをたどると、疲れ切ったサラリーマンがビールといっしょに頬張っていた。ガムと菓子パンの匂いで電車内は満たされていた。なぜかひどく落ち着く匂いでもあった。サラリーマンの顔には疲労が貼りついていて、治療したほうがいいと思った。いや、治療したほうがいいのはわたしかもしれない。のっぺらとした顔が暗いガラスに写って、不幸も幸福も背負っていない顔。恋人に会ってきた女の顔だとは思えなかった。

明るい場所が嫌だ。明るい人が嫌だ。明るく振る舞って冗談を言う自分はもっと嫌だ。