潮騒

日記

4/18

 

どこまでが私の身体。どこまでも伸びているように見えるけど、何かのリボンで、ロープで、縛られている。ここに居なさいと。体と空気の境界線を決めるあなたの存在。ここに居ることの悲しさと温かさで景色は色づく。雨が降っている。光りで窓が白くなる。朝だと認識する。シーツの冷たいところを探るように、心の隙間を触る。渇いた夢を見た。砂地だらけの。歌をうたっていた。他人の感情なんて知らない。

 

 

1/23

 

時間を無駄にしているという感覚はこころを萎ませる。子どもの頃は、時間なんて無限にあると本気で思っていたし、親が死ぬなんて考えもしなかったし、ぼぉっとしてるとあっという間に時間は過ぎていく。何がしたいんだっけ。最初から無いのかもしれない。

 

それでも何かしようと思って、最近はYouTube自己啓発系の動画なんか観たりしちゃっている。ツイッターで芸能人の不埒について語る一般人の怒りを流れ弾のように浴び続けるよりよっぽどマシだと思った。

 

 

1/7

 

「優しさは体力がいる」という言葉を目にして、その通りかもしれないと思った。焦燥感や虚無感や倦怠感は人の心の体力を侵食して無にしてしまう。普段は優しい気持ちを持っていても、体力が無になっていたら何もできない。その日常の些細なことで、「自分は全く優しい人間じゃない」と思い落ち込んでしまう。力がいることなんだ。気遣ったり、尽くしたり、愛を注ぐということは。自分に愛を注ぐことも、体力が無ければいけないだろう。

 

1/5

 

年が明けてしまっても、もうわたしの中に日付けなんてものは無くてずっと地続きの日々。カレンダーを埋めても、何も埋まらないものは確かにあるってもっと早く知りたかった。永遠にこんな状態のような気がして寒気がして、彼との電話も早々と切った。まったく優しくなれない。それも自分だと思うことでしか自分を保つことができない。ぬるい環境に身を置きすぎて緊張感のないたるんだ頬を引っ張る。

 

小川洋子の「密やかな結晶」を読み始めた。自分の住んでいる島から次々と、物やそれにまつわる記憶が消滅していく話。忘れてしまっても自分のなかに確かに残るものがあると信じているけれど、それはとても不確かなものだ。感触は無くさないでいたい。わたしの中を通り過ぎていく傷。わたしを少しずつ歪ませて、作り出していく傷。確実に刻み込まれる傷。

 

12/6

 

好きだった男の夢を見たって何にも満たされやしない。愛されることも、愛することも叶わなかった男が出てくる夢なんて。なんで楽しそうにしてるの。どうして私がそいつと過ごした実際の時間より濃密で親密で、温かいの。どうして。夢なんて嫌いだ。いつだって現実を突きつけてくる。できることなら忘れてしまいたい。

ショックで悲しくて着替えることができなかった。パジャマの上にパーカーをかぶって過ごした。ゆったりとした曇り空で、空も私と同じ気持ちでいるようだった。鈍い頭痛が続いている。ポケモンのゲームばかりしている。

 

 

無題

 

数年前に書いた自作の詩のようなもの3点。

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『結露』

街にも空にも海にも
どこにも行けない言葉たちは、
朝靄を吸い込んだ呼吸器のなかで結露して、静かにくちびるを濡らしている

 

『眠り』

だれもひろわない亡骸を
そっとわたしだけがもっていたから
呼吸で静まる夜にここで
いつものお別れをしましょう
朝に続く口に花を挿して
懐かしさでずっとねむりたい

 

月下美人

禍々しい茎

ひっそりとしおれて

はっきりと白い花

わたしを うらまないで

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なんとなく見せたくなっただけ。