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どこまでが私の身体。どこまでも伸びているように見えるけど、何かのリボンで、ロープで、縛られている。ここに居なさいと。体と空気の境界線を決めるあなたの存在。ここに居ることの悲しさと温かさで景色は色づく。雨が降っている。光りで窓が白くなる。朝だと認識する。シーツの冷たいところを探るように、心の隙間を触る。渇いた夢を見た。砂地だらけの。歌をうたっていた。他人の感情なんて知らない。
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「優しさは体力がいる」という言葉を目にして、その通りかもしれないと思った。焦燥感や虚無感や倦怠感は人の心の体力を侵食して無にしてしまう。普段は優しい気持ちを持っていても、体力が無になっていたら何もできない。その日常の些細なことで、「自分は全く優しい人間じゃない」と思い落ち込んでしまう。力がいることなんだ。気遣ったり、尽くしたり、愛を注ぐということは。自分に愛を注ぐことも、体力が無ければいけないだろう。
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年が明けてしまっても、もうわたしの中に日付けなんてものは無くてずっと地続きの日々。カレンダーを埋めても、何も埋まらないものは確かにあるってもっと早く知りたかった。永遠にこんな状態のような気がして寒気がして、彼との電話も早々と切った。まったく優しくなれない。それも自分だと思うことでしか自分を保つことができない。ぬるい環境に身を置きすぎて緊張感のないたるんだ頬を引っ張る。
小川洋子の「密やかな結晶」を読み始めた。自分の住んでいる島から次々と、物やそれにまつわる記憶が消滅していく話。忘れてしまっても自分のなかに確かに残るものがあると信じているけれど、それはとても不確かなものだ。感触は無くさないでいたい。わたしの中を通り過ぎていく傷。わたしを少しずつ歪ませて、作り出していく傷。確実に刻み込まれる傷。